米NASA、月面基地建設計画を発表 中国との宇宙開発競争のなか

将来の月面基地の運用を支える月面インフラを描いたアーティストのCG画像。トレーラーハウスのような居住施設、ポールにソーラーパネルを立てた電力システム、宇宙飛行士用の走行車などが描かれている

画像提供, NASA

画像説明, NASAは月面基地の居住施設や電力システムなどのイメージ図を公開した
Published
この記事は約 5 分で読めます

ジョージーナ・ランナード科学記者

米航空宇宙局(NASA)は26日、月面基地建設に向けた計画スケジュールを発表し、月に送る予定のロボット着陸機、跳躍型ドローン、月面走行車などの詳細を明らかにした。併せて、アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏の宇宙企業ブルー・オリジンなど複数の企業と、開発などで提携することを明らかにした。

アメリカは、ドナルド・トランプ大統領が2029年に退任する前に、アメリカ人を再び月に着陸させることを目指している。

宇宙開発の分野では現在、人類を月面に再度送ることをめぐって、アメリカと中国が争っている。そのためNASAには、この新たな競争で優位に立っていると見られるよう圧力がかかっている。

中国は、2030年までに人類を月に着陸させる独自の計画を進めている。今月25日には、宇宙船「神舟23号」を打ち上げ、乗組員を同国の天宮宇宙ステーションへと送った。

一方のNASAは今年3月、2032年までに月の南極に原子力と太陽光エネルギーで稼働する恒久的な基地を建設するという、200億ドル(約3兆1800億円)規模の計画を発表した。

NASAのジャレッド・アイザックマン長官は26日、今回の発表はアメリカが「二度と月を手放さない」ことを意味すると述べた。

基地が設置されれば、アメリカは月面での科学実験の実施、貴重な資源の採掘の可能性の追求、さらには火星への移動の容易化などが可能になる。

しかし大多数の専門家は、NASAが示したスケジュールは非現実的だとの見方で一致している。

NASAは今年4月、月の周りを飛行する「アルテミス2」計画で、4人の宇宙飛行士を月の周回軌道に送ることに成功した。それにもかかわらず、一部の科学者は、次に人類を月面に着陸させるのは中国になる可能性が高いとみている。

英オープン大学のシメオン・バーバー博士はBBCに対し、「中国が先に到達しても、私はまったく驚かないだろう」と述べた。NASAはこれまで、人類を月に着陸させることができる宇宙船の確保で挫折を繰り返してきた。

計画は3段階、民間宇宙企業と機体製造契約

NASAの「イグニッション・ムーンベース」計画は、3段階で構成されている。

計画ではまず、人類が現地へ向かう前に、ロボット着陸機や跳躍型ドローンを送り込み、月の複雑な地形を探査し、地図化することを目指している。

また、宇宙飛行士が月面を走行したり、通信機器や科学機器を運搬したりできる輸送車両も送り込まれる予定だ。

26日の発表では、ブルー・オリジン、インテュイティブ・マシーンズ、アストロボティックといった企業が、これらの機体の製造契約を獲得したことも明らかになった。

NASAは、ブルー・オリジンの月着陸機「エンデュランス」に対し、精密な着陸に加え、自律的な航法および制御を実行できる能力を求めている。

アストロボティックの着陸機「グリフィン1」は、月の南極付近の「ノービレ・クレーター」に着陸する見通しだ。

これらの機体はまた、NASAのために科学機器も運搬する予定。これには、高解像度カメラや、レーザーの反射を利用して機体の着陸を支援する装置が含まれる。

「ムーンベース」計画の責任者カルロス・ガルシア=ガラン氏によると、このロボットによる探査は2029年まで続く見込みで、25回の打ち上げで、合計4トンの貨物を月面に送る予定だという。

次の段階として、NASAは核分裂炉を含む原子力および太陽光発電施設の建設を計画している。これにより、2032年までに人類が「半恒久的」な居住施設で月に滞在できるようにすることを目指している。

また探査車によって、宇宙飛行士が岩だらけの月面を長距離移動できるようにする。

凍結した水が発見されている月の南極は、この水を飲料水として利用したり、酸素の生成に用いたりできるため、特に注目されている場所だという。

岩肌の月面に、ソーラーパネルを搭載したドローンが着陸している様子を描いたCG画像

画像提供, NASA

画像説明, NASAの月の南極探査計画「ムーンフォール」で使用されるドローンのイメージ画像

しかし、NASAのこの計画は、人類を安全に月へと輸送できる宇宙船が準備できることにかかっている。

米富豪イーロン・マスク氏の宇宙企業「スペースX」は、「スターシップ・ヒューマン・ランディング・システム(有人月面着陸船、HLS)」と呼ばれる機体の開発を請け負っているが、これまでに数多くの失敗や遅延に直面してきた。

月科学者のバーバー博士は、「制約となっているのは、宇宙飛行士を実際に月面へ降ろすことだ」と説明する。

「私には、(NASAが)自分たちには計画があると言い募らざるを得ない状況にあると感じているように思える。したがって、この背後には多くの政治的な推進力があると思う」とも、同博士は述べた。