【解説】 プーチン氏、習氏の歓待受けるも 天然ガス・パイプラインで合意はなく

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スティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長(モスクワ)
その光景は、一瞬、北京をモスクワと見間違えてしまうほどだった。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席が、人民大会堂へ向かってレッドカーペットを歩く中、中国の軍音楽隊はロマンチックなロシア歌曲「Moscow Nights」(邦題:モスクワ郊外の夕べ)を演奏した。
歌詞には「このモスクワの夜が私にとってどれほど大切なものか、あなたが知っていたなら」という一節がある。
その旋律の奥には、政治的ロマンスの兆しが隠されていたのだろうか。
そして、「ブロマンス」(男性同士のロマンスにも似た熱い友情)の兆しさえも……?
プーチン氏は習氏を「親愛なる友人」と呼び、習氏はプーチン氏を「古くからの友人」と呼んだ。
2人の指導者はそういう言葉遣いを通じて、自分たちは特別な関係を築いてきたのだと示したい様子だった。2人は実際、関係構築のために長年、時間をたっぷりかけてきた。2人は実にこれまで、40回以上も対面を繰り返してきたのだ。
両首脳は公式声明で、両国間の「戦略的連携」や「パートナーシップ」、「相互尊重」、「友情」、「信頼」について言及した。
2人は一緒になって、アメリカの「無責任な」核政策を強い調子で批判し、ドナルド・トランプ米大統領のミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム」を非難した。
訪中前夜、ロシア政府系新聞は1面に2枚の大きな写真を掲載した。1枚は、先週に訪中を終え、米大統領専用機エアフォース・ワンのタラップを上る寂しげな表情のトランプ氏を写したもの。もう1枚は、プーチン氏と習氏が並んで歩く昔の写真だった。
視覚的に何を伝えようとしているのかは、明らかだった。ロシアと中国は、世界の舞台で肩を並べている、ということだ。
だが、これはラブソングやロマンスやブロマンスの世界の出来事ではない。
これは地政学の話だ。
地政学の世界において、他者との関係が愛情や好意に基づいて築かれることはめったにない。多くの場合、その根底にあるのは自己利益だ。
そして、習氏とプーチン氏の首脳会談で、その「愛」にも限界があることがあらわになった。
エネルギー分野を例に挙げよう。
ロシアは、新しい天然ガス・パイプライン「シベリアの力2」の計画推進に意欲的で、北京での会談で何らかの進展を期待していた。このパイプラインは、ロシア・西シベリアからモンゴルを経由して中国北部へ、ロシア産ガスを追加供給するためのものだ。ロシア側にとっては、欧州市場への供給が縮小する中での穴埋めとなる。
ロシアと中国は昨年、この計画に関する覚書に署名した。しかし、中国政府には合意を急ぐ様子は見られない。価格の問題に加え、中国はロシア産化石燃料への過度な依存を避けたがっているのだと、そういう意見もある。
クレムリン(ロシア大統領府)は20日、ロシアと中国がこの計画の「条件について大筋で合意した」と発表した。
しかし、最終的な合意に至る兆しは見られない。
このことにロシアの当局者たちはがっかりするだろう。しかし、驚きはしないはずだ。
ロシア政府系新聞は、プーチン氏と習氏が並ぶ写真を掲載したのと同じ号で、こう認めている。「ロシアと中国の立場は同じではない。両国の利益が常に一致するわけではない」と。
「これほど大きな二つの国が、ともに大国意識を持っている以上、これは必然的な結果だ」
米ロ関係は
「ブロマンス」という言葉はかなり最近まで、別のハイレベルな関係性、つまりプーチン氏とトランプ氏の関係性を表す際にも使われていた。ロシアとアメリカが関係改善を約束していた昨夏のことだ。
プーチン氏とトランプ氏は昨年8月、米アラスカ州アンカレッジで会談した。ロシア当局はその後、「アンカレッジの精神」という言葉を使うようになり、ウクライナでの戦争を(ロシア政府にとって受け入れ可能な条件で)終わらせる方法について、米ロ両政府が相互理解に至ったと示唆していた。
しかし戦争は終わらなかった。今では、「アンカレッジの精神」は影を潜めている。
ロシアのユーリ・ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)は、北京での首脳会談に際して、「『北京の精神』は存在する」と語った。
そしてウシャコフ氏はこうも言った。
「しかし、『アンカレッジの精神』? 私はそんな表現を使ったことは一度もない」












